死刑制度に反対します

当事者という言葉を使うことの難しさを感じる場面によく出くわします。差別や暴力の問題においては特にこれで誰かを切り離すことになっていやないかとか、ものごとを単純化しているばかりなんじゃないかとか、ある問題とは無関係なグループを作り出すような…

4月1日に

沖縄県は中頭郡読谷村にあるチビチリガマ。沖縄戦での”集団自決”とともにその名はよく知られている。わたしがチビチリガマのことを知ったのは中学生のときのある授業でのことだった。それは平和学習といった類のものではなく通常の理科の時間だったのだけれ…

“議論”のまえにすべきこと

今年の初めにKADOKAWAから出版予定だったある翻訳書が昨年12月に急遽中止されるという事案があった。あえて作者、作品名には言及しないが、そのトランスジェンダーに対する差別、憎悪扇動的な内容や明らかな誤情報、事実歪曲的記述などに多くの批判的指摘が…

『福田村事件』

『福田村事件』(監督/森達也、脚本/佐伯俊道、井上淳一、荒井晴彦)を観ました。1923年9月6日、香川県のある被差別部落から関東に行商にきていた一行が、関東大震災時の朝鮮人暴動デマによって扇動された民衆に暴行を受け、そのうち十人が惨殺されたという“…

反日的狼煙

日帝は、36年間に及ぶ朝鮮の侵略、植民地支配を始めとして、台湾、中国大陸、東南アジア等も侵略、支配し、「国内」植民地として、アイヌ・モシリ、沖縄を同化、吸収してきた。われわれはその日本帝国主義者の子孫であり、敗戦後開始された日帝の新植民地主…

ダイアナという名の少女

アン・シャーリーのとなりにはいつだってダイアナ・バリーがいます。『赤毛のアン』の主人公アン・シャーリーの"腹心の友"ダイアナ・バリーのことは、物語を知らない方でもなんか仲良しの友達がいるんだったかねというくらいには知られているんではないでし…

『哀れなるものたち』 !ネタバレ!

映画『哀れなるものたち』の内容に言及しています。そして使用する言葉によってかなりしんどく感じる方もおられると思いますので、そのときは無理はせずすぐに読むのをやめていただいたらと思います。 監督/ヨルゴス・ランティモス 脚本/トニー・マクナマラ…

『乳房よ永遠なれ』

監督/田中絹代、脚本/田中澄江『乳房よ永遠なれ』を観ました。1955年公開の本作は田中絹代の監督三作目にあたります。 ふみ子は家事労働中にも「おい」と呼ばれるやいなや夫・茂のもとに駆けつけなければならない。健康状態の良くない茂のケア、困窮する生活…

誰の感情なのか

死刑反対の表明をすると必ず"被害者遺族の感情は"という言葉を投げかけられます。そして加害者擁護や加害の矮小化という全く別の方向へ歪曲され、やがてとても冷酷なやつだというような評価をいただくことも茶飯事です。被害者遺族の感情など軽々しく話せる…

コジコジはコジコジ

TVアニメの『コジコジ』(原作さくらももこ)を観ています。結構久しぶりというのもあって懐かしさと共に作品との出会いなおしをしているような気分です。 “コジコジは生まれた時からずーっと将来もコジコジはコジコジだよ”このかなり有名なセリフは第一話の…

『ミツバチと私』

監督・脚本/エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン『ミツバチと私』を観ました。以下本編の一部内容に言及している箇所があります。 カメラを向けられるのが苦手です。自分の写る写真を見ることも。自分の姿が好きではないということもあるんですけど、こち…

2023年の本10冊

•『ホワイト・フェミニズムを解体する インターセクショナル・フェミニズムによる対抗史』カイラ・シュラー (著), 飯野由里子 (監訳), 川副智子 (訳)/明石書店 •『ウィッピング・ガール トランスの女性はなぜ叩かれるのか』ジュリア・セラーノ (著),…

『秘密の森の、その向こう』-Petite Maman

セリーヌ・シアマ監督『秘密の森の、その向こう』(原題:Petite Maman) 結構前に実は一度観ているんですが、もう一度観てやはりすごく好きな映画だと改めて思ったのでそういうことを書こうと思います。 8歳のネリーは母親と父親と共に亡くなった祖母の家の…

『ヴィーガンズ・ハム』

『ヴィーガンズ・ハム』(原題:Barbaque)を観ました。監督・脚本はファブリス・エブエ。マリナ・フォイス演じるソフィアと共にヴァンサンという役名で主演を務めています。 ソフィアとヴァンサンの経営する人気のない精肉店が「過激派ヴィーガン」によって…

「監獄」からの解放

まず懲らしめという感覚を手放さないとならないね。別に懲らしめるために暴力や差別や不正を糾弾するんじゃあないし。恐ろしいほどそちらに自然と傾くという自覚は確かにあるから、余計に強く意識しておきたいと思うね。 — あさり固め (@athalisawali) 2023…

記憶と想像と変化

いつかのどこかの風景が目の前に現れる。そんな魔法のような力が音楽にはあります。もういないはずの、どこかの階段の踊り場や体育館のすみっこなんかにうずくまるわたしにもう一度ならず何度でも会える。そんな場面へとわたしを誘う多くの音楽がある。わた…

脱排除のための排除⚠️人の死に関係する内容、引用等一部差別的表現を含みます

はじめに明確にしておきます。わたしは死刑制度にあらゆる場合において反対です。さらに死刑制度廃止のための段階的課程における終身刑導入という理論にも反対の立場です。 今回は死刑について書こうと思いましたので上記のように立場をあらかじめ明確にして…

『差別する人の研究』

阿久澤麻理子『差別する人の研究 変容する部落差別と現代のレイシズム』(旬報社)を読了しました。 「差別する人(側)の研究」という点から現代の部落差別の実態を調査し分析する内容です。特徴としては「現代的レイシズム」という概念を用いている点が挙げら…

『慶州は母の呼び声』

森崎和江『新版 慶州は母の呼び声ーわが原郷』(ちくま文庫)を読みました。 "わたしたちの生活が、そのまま侵略なのであった" 日本による植民地主義。その"恩恵"に包まれながらその地で育った筆者による自伝的エッセイ。大邱、慶州、金泉と主に1930年代から…

ひろプリ40話のこと

11/12放送のひろがるスカイ!プリキュア40話『なかよち♡エルちゃん結婚式☆』でのあれこれを書きます。 内容としては、ある結婚式の映像をテレビで見たエルちゃんはツバサと結婚すると言い出す。それをうけてメンバー全員で結婚式を模した形のホームパーティ…

『アンクル・トムの小屋』

ハリエット・ビーチャー・ストウ/土屋京子訳『アンクル・トムの小屋』光文社古典新訳文庫を読了しました。170年以上前の小説で、既にこれまでに優れた批評が数多く存在しているのですが、それでも今年出版された新訳版を読んだ上でわたしなりに考えられるこ…