2024-01-01から1年間の記事一覧

自己責任じゃないー死刑廃止を考える2ー

前回の記事で引用した内閣府世論調査*1、佐藤舞とポール・ベーコンによる調査*2の両方において、死刑廃止の理由についての質問に「生かしておいて罪の償いをさせた方が良い」という回答を選択したひとの割合が半数近くに上ることが示されていた。それにして…

世論世論というけれどー死刑廃止を考えるー

死刑制度に八割が賛成していることを示す世論、ということがしばしば言われる。先日もインターネット上で、死刑賛成の世論は揺るぎないという主張を目にした。世論から変えようとしてもそれは無駄なことであって、廃止派であってもまずは存置派の考えを一蹴…

広島と長崎の式典のスピーチを読んで感じたどうのこうの

今年の8月6日の広島平和記念式典での湯崎英彦県知事による「あいさつ」*1、8月9日の長崎平和祈念式典での鈴木史朗市長による「平和宣言」*2、両者ともにいたく評判のようです。そこでそれぞれを読んだわたしが思うこと、その共通点からみえることなどを書い…

はだしのままに

『はだしのゲン』を読んでいると、通っていた小学校の図書室を思い出す。古い校舎の端にある絨毯敷きの教室の、いちばん奥の席に座るとみえた外の景色。 たくさんの本のにおい。背表紙に貼られた赤い禁退出のシール。クラスの誰かが隣にいたり、あるいはぽつ…

『沖縄戦記 鉄の暴風』

沖縄タイムス社編『沖縄戦記 鉄の暴風』がちくま学芸文庫として出版された。沖縄戦の前段階である日本陸軍の設置から十・十空襲、45年の米軍上陸から地上戦へと続く沖縄戦の実態を、膨大な日誌や経験者からの聞き取りによって詳細に明らかにしまとめられた記…

死刑制度に反対します

当事者という言葉を使うことの難しさを感じる場面によく出くわします。差別や暴力の問題においては特にこれで誰かを切り離すことになっていやないかとか、ものごとを単純化しているばかりなんじゃないかとか、ある問題とは無関係なグループを作り出すような…

4月1日に

沖縄県は中頭郡読谷村にあるチビチリガマ。沖縄戦での”集団自決”とともにその名はよく知られている。わたしがチビチリガマのことを知ったのは中学生のときのある授業でのことだった。それは平和学習といった類のものではなく通常の理科の時間だったのだけれ…

“議論”のまえにすべきこと

今年の初めにKADOKAWAから出版予定だったある翻訳書が昨年12月に急遽中止されるという事案があった。あえて作者、作品名には言及しないが、そのトランスジェンダーに対する差別、憎悪扇動的な内容や明らかな誤情報、事実歪曲的記述などに多くの批判的指摘が…

『福田村事件』

『福田村事件』(監督/森達也、脚本/佐伯俊道、井上淳一、荒井晴彦)を観ました。1923年9月6日、香川県のある被差別部落から関東に行商にきていた一行が、関東大震災時の朝鮮人暴動デマによって扇動された民衆に暴行を受け、そのうち十人が惨殺されたという“…

反日的狼煙

日帝は、36年間に及ぶ朝鮮の侵略、植民地支配を始めとして、台湾、中国大陸、東南アジア等も侵略、支配し、「国内」植民地として、アイヌ・モシリ、沖縄を同化、吸収してきた。われわれはその日本帝国主義者の子孫であり、敗戦後開始された日帝の新植民地主…

ダイアナという名の少女

アン・シャーリーのとなりにはいつだってダイアナ・バリーがいます。『赤毛のアン』の主人公アン・シャーリーの"腹心の友"ダイアナ・バリーのことは、物語を知らない方でもなんか仲良しの友達がいるんだったかねというくらいには知られているんではないでし…

『哀れなるものたち』 !ネタバレ!

映画『哀れなるものたち』の内容に言及しています。そして使用する言葉によってかなりしんどく感じる方もおられると思いますので、そのときは無理はせずすぐに読むのをやめていただいたらと思います。 監督/ヨルゴス・ランティモス 脚本/トニー・マクナマラ…

『乳房よ永遠なれ』

監督/田中絹代、脚本/田中澄江『乳房よ永遠なれ』を観ました。1955年公開の本作は田中絹代の監督三作目にあたります。 ふみ子は家事労働中にも「おい」と呼ばれるやいなや夫・茂のもとに駆けつけなければならない。健康状態の良くない茂のケア、困窮する生活…

誰の感情なのか

死刑反対の表明をすると必ず"被害者遺族の感情は"という言葉を投げかけられます。そして加害者擁護や加害の矮小化という全く別の方向へ歪曲され、やがてとても冷酷なやつだというような評価をいただくことも茶飯事です。被害者遺族の感情など軽々しく話せる…

コジコジはコジコジ

TVアニメの『コジコジ』(原作さくらももこ)を観ています。結構久しぶりというのもあって懐かしさと共に作品との出会いなおしをしているような気分です。 “コジコジは生まれた時からずーっと将来もコジコジはコジコジだよ”このかなり有名なセリフは第一話の…

『ミツバチと私』

監督・脚本/エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン『ミツバチと私』を観ました。以下本編の一部内容に言及している箇所があります。 カメラを向けられるのが苦手です。自分の写る写真を見ることも。自分の姿が好きではないということもあるんですけど、こち…